2018/05/17

時計は1つでいい

 

たまに通る道の脇に風変わりな建物があって、わたしは前からその建物が怖かった。なぜかというと、ごく小さな小屋なんだけど外壁一面に時計がかけてあるから。意味がわからない。時間はどれもあってはいなくて1つ1つが示す時刻はばらばら、特に振り子時計が多かった。皆一様に針を動かしていて、でも小屋には全くひと気はなくてとにかく不気味、夜なんかはその道を通りたくなかった。

一度夜中に通ったことがあって、わたしが小屋の脇を通り過ぎるちょうどそのタイミングで時計が1つ音を鳴らし始めて、それに続いて2つ3つ他の時計も鳴り出した。鐘の音なんだけど、本当に怖かった、というかびっくりするじゃないですか。それ以来ますますその道を使わなくなったんだけど、先日思い立って通ってみたらその小屋は忽然と消えていたんですね。時計も小屋もはじめからなかったみたいに綺麗に何もなくなってしまった。あんなに奇怪な小屋なのにその話をする人は誰もいなかったし、もしかしたらはじめから何もなかったのかもしれない。