2018/03/27

牛乳強奪メモリー

 

中学三年生の終わりの方の3分の1の期間、牛乳を強奪することに命を燃やしていた。これを読んでいる人はきっと意味がわからないと思うだろうし、いまこれを書きながら思い返しても自分でも意味がわからない、きっと深い意味なんてなかった。仲の良い女の子2人とわたしは毎日学校の余った牛乳を強奪することにとにかく熱中していた、それだけなのだ。

わたしの通っていた中学校が割と名の知れた荒れた中学校だったせいか、思春期ならではの変な意識なのかは知らないが、お昼の時間に牛乳を飲むのがださい、というような風潮がうっすらあった。わたしの中学校では、お昼はお弁当を持ってきてもよし、学校にお弁当を届けてくれる業者がいたのでそちらを利用するもよし、という具合だったのだけど、牛乳だけは全員分が用意されていて昼食時に飲むことになっていた。でも、お昼に牛乳を飲むのがださい、という雰囲気があったせいか、クラスの3分の1とか半分くらいの子は牛乳を飲まずにそのまま牛乳を運搬するケースに戻していた。それを、私たち3人は毎日せっせと強奪していたのである。

発端はもうおもいだせないのだけど、とにかく牛乳がもったいないという一心だったと思う。先生に見つからないようにこっそりとスクールバッグに牛乳をしまい込み持ち帰るようになった。牛乳がたくさん余るのはわたしのクラスだけではなかったので、ほかのクラスの分も強奪して回った。それだけでは飽き足らず、階段の踊り場で他学年の牛乳当番が牛乳のケースを返却しに行くのを待ち伏せて強奪するようにすらなった。当然牛乳委員会(牛乳の管理をしていて、残乳量のチェックなどしている)の担当の先生にバレて怒られるのだけど、なぜ怒られるのか全くわからなかった。そのまま牛乳を捨てる方が絶対悪!そう信じて毎日毎日先生と攻防しながら必死で牛乳を強奪し続けた。

強奪した牛乳は3人で山分けし、1人10本は毎日持ち帰っていた。家の冷蔵庫は牛乳でいっぱい、賞味期限と戦いつつ、シチューやらクラムチャウダーやらココアやらに利用したりして消費にも力を入れた。3人のうち誰かのうちで牛乳の在庫が多いとなれば、放課後にその子の家に寄りココアをみんなで飲むなど、牛乳の消費の面でも連携していた。

正直、途中から牛乳がもったいないとかそういう意識はどうでもよくなっていて、先生にバレないように牛乳を確保して回るスリルや、友達と連携して牛乳を1つでも多く確保して回るというのがとにかく楽しくて仕方なかった。

中学を出て、牛乳とは疎遠になった。強奪仲間たちとも疎遠になった。もう牛乳強奪のことは滅多に思い出すことはないのだけど、突然今日思い出して自分でもびっくりしてしまった。思い出したのがあまりに急だったのと、本当に熱中して牛乳を強奪していたことがあまりに滑稽だったから。彼女たちはいまどうしているだろうか、中学生たちはまだ牛乳を残しているのだろうか。牛乳は栄養価が高いからなるべく飲んだ方がいいよ、食事には確かに合わないけど。